大判例

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広島高等裁判所 昭和27年(ナ)2号 判決

原告 繁高勲

被告 広島県選挙管理委員会

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告は「被告が昭和二六年一二月二〇日なした世羅郡津名村農業委員会委員選挙における原告の当選を無効とする、との裁決はこれを取消す。」との判決を求め、その請求原因として次のとおり述べた。

原告は昭和二六年七月二〇日執行の広島県世羅郡津名村農業委員会委員選挙に立候補して当選したところ、訴外吉田秋夫から津名村選挙管理委員会に対し原告の右当選の効力に関する異議の申立をし、同委員会はその頃原告の右当選を無効とする旨の決定をした。そこで原告は同年八月二日被告委員会に対して訴願したところ、被告委員会は同年一二月二〇日原告の訴願を棄却し原告の右当選を無効とする旨の裁決をし、その裁決書は同月二三日原告に送達された。

被告委員会の右裁決の理由は、農業委員会法第八条によると市町村農業委員会委員の被選挙人であるためには選挙期日現在に当該市町村の区域内に住所を有し一反歩以上の農地につき耕作の業務を営む者及び同居の親族又はその配偶者であることを要するのであるが、原告が農業委員会法施行令第二条により申請した農地一反二五歩のうち津名村大字敷名字門出三九四〇番地畑五畝七歩のうち一畝九歩は訴外新井オトメが昭和二三年から昭和二六年八月一七日まで耕作していたので本件選挙期日たる昭和二六年七月二〇日現在の原告の耕作面積は一反歩に足りないことになり、原告は本件選挙の被選挙権がないから原告の前記当選は無効であるというにある。しかしながら、前記畑一畝九歩は原告において新井オトメを雇つてこれを耕作させたものであつて、右畑一畝九歩は原告の自作地であるから、原裁決は違法である。そこで原裁決の取消を求めるため本訴請求に及んだ次第である。

被告委員会代表者は主文と同旨の判決を求め、答弁として、原告主張事実のうち原告主張の畑一畝九歩が原告主張のように本件選挙期日現在原告の自作地であつたことはこれを否認するが、その他の事実はすべてこれを認めると述べた。(各証拠省略)

三、理  由

原告主張事実のうち原告主張の畑一畝九歩が本件選挙期日現在原告の自作地であつたことを除きその余の事実は当事者間に争のないところである。

そこで本件唯一の争点である右畑一畝九歩が右選挙期日現在原告の自作地であつたか否かにつき判断するに、成立に争のない乙第三号証の一、二第五号証の一、二、証人村上静夫の証言により真正に成立したものと認める乙第六号証並に証人松島恒太郎、村上静夫、福馬只四郎の各証言証人新井オトメの証言の一部を綜合すれば、原告の妻の母中広ササノは津名村大字敷名に住んでいたが、年寄りであつたので同部落の新井オトメがその面倒をみてやり、その代りに原告からその所有の前記畑一畝九歩を小作料の定めなく借りうけてこれを耕作し、その収獲した農作物の一部は中広ササノの食用に供したがその大部分は自己において収得し、昭和二五年九月二〇日ササノが死亡した後も引続きこれを耕作していたところ、昭和二六年五月一一日同村の招魂祭の日に原告から前記農地の返還を求められたので、当時右農地に植えてあつた夏小豆は新井オトメにおいて収獲の上右農地を原告に返還する条件の下に原告の右解約の申込を承諾して同年八月一六日夏小豆を収獲した上右農地を原告に返還しそれまでは原告において右農地を耕作しなかつた事実を認めるに十分である。証人新井オトメ、広田美喜男の各証言によると昭和二六年八月一七日新井オトメが前記農地から収獲した夏小豆を広田美喜男に託して原告に送付し、原告は人夫賃名義で金百円を新井オトメに支払つた事実を認めることができるけれども冐頭認定事実に徴すると、右は本件当選の効力に関する異議申立後の事実であることが明らかであるから、右認定事実を以ては前記認定を覆し難く、他に右認定を覆すに足る証拠はない。

してみると、前記畑一畝九歩は本件選挙期日たる昭和二六年七月二〇日現在は新井オトメの耕作にかかり原告の自作地とはいえないから、原告が農業委員会法施行令第二条により申請した農地一反二五歩から右農地を除くと、右選挙期日現在における原告の耕作面積は法定の一反歩に足りないことになり、原告は本件選挙の被選挙権を有しないから、原告の当選は無効といわなければならない。

右と同趣旨の理由で原告の訴願を棄却した被告委員会の原裁決は正当であつて、これが取消を求める原告の請求は失当である。

よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 植山日二 宮田信夫 池田章)

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